世界中にこの振り子は存在します。
ゆっくりと動く巨大な振り子は辺りを不思議な空気に包み込み、
この振り子が世界を創り、支えているようにも思えてきます。
昔外国で見た静かに動くこの振り子は、頭の奥のほうに刻まれ、ずっと振れ続けています。
私は日常生活の中で、何かに歪められた風景を見ているのではないかと怖くなることがあります。
あらゆるものは、見る角度によって違う意味を持ちます。
それに対し、作品の中では普段の世界の設定を壊し、造り変え、色んな空間を同時に存在させることができます。
私は作品と過ごしている間、画面の中の時が止まり、重力が変化し、おかしな空間が生まれ、
そしてまたゆっくりと動き出す瞬間を見逃さないよう待っています。
森裕子