笹田晋平は感じている。現在の日本人が創り出す油彩画と呼ばれるものは、筆致を残したいわゆるニューペインティングの流れを汲むものと、モチーフの再現に終始した写実系絵画との2つしかない、と。
前回の個展文でも触れたように、顔料を油で溶かすという新たな技法に格闘した明治黎明期には、独特な「油画」を生み出し、それらの作品が方々で見られる重要なものであることはご存じの通りである。
しかし、17世紀の欧州に見られる、完璧な構図とともに舞台設定の整った物語性、光の最大限の効果、大画面で見せる伝統的な絵画に関して日本には全く存在しない。そもそもそのようなものを描くモチベーションやニーズが無かったし、時代が違うという意見にも素直に頷くのだが。
しかし、笹田の目指す方向は、作品のコンセプトや作家のテーマ性というよりは「絵」としての面白さを追求した創作を生み出すことに重きを置く。
さて、タイトルの「前田荘」というのは、笹田晋平が暮らし、そして制作に没頭するその部屋のアパート名である。ちなみに、「荘」にフィットする英単語はどれも日本人の感覚と合いにくいことが分かった。ここでは、flatlet を当てているが、もっと適切な語句があれば是非ご教示いただきたい。もう一つのバロックという言葉だが、笹田の作品は、バロックというには些か古典的のようである。ここでは「17世紀の絵画」という時代性を表すワードとして使用している。
そして、日本人なら容易に想像できるように、前田荘というのは、いかにも高度成長期以降の典型間取りの「荘」というネーミングがピッタリな適度にやつれたアパートである。そのような昔ながらのドメスティックな狭い空間を舞台として、典型的な和顔のモデルを鎮座させる。
そこに今回の展覧会タイトルの意味が重なっている。つまり、西洋絵画の黄金期の巨匠の、そのまた名作に対比させながら、今日の日本人として描くべき油彩画を生み出す行為であり、「現代・日本」の新たな「油画」を創り上げるという笹田晋平の強い宣言でもあるのだ。もちろん作家は現代美術の枠組みを超えた先を見据えているのだろう。
※今回の新作は、それぞれ小さな模写と共に展示をした。
笹田晉平是這麼的認為。現今的日本人所創作出來的油畫,指的只有兩種,一種是在新繪畫的思維中筆觸所留下的痕跡,另一種則是從過去到現在以主題再現為中心的寫實系繪畫。
在上回的個展中所提到的一樣,在明治初期以油溶解顏料的嶄新技法去挑戰所創出獨特的「油畫」,是像大家所理解的那樣,這些作品在不同的地方被觀看的重點。
但是,看看17世紀的歐洲,那近乎完美的構圖和完整的舞台背景的故事性一起,把光的效果表達至極致,在日本是沒有關於這樣大畫面表現的傳統繪畫。因為就以原來日本的繪畫歷史來看,其實並沒有需要或是動機去表現的理由,因此站在不同的時代,我只能認同。
只不過,笹田的創作方向,比起作品的概念或是作家的主題性,多把重點放在追求繪畫的趣味性上。
標題「前田莊」是笹田晉平起居和創作時居住的建築物名。順道一提,當作者再尋找「莊」的英文單詞時了解到,適合解釋「莊」的英文單詞中沒有一個可以比較適宜的可以解釋日本人的感覺。因此在這裡,使用flatlet來做解釋,如果你們認為有更適合的句語的話,歡迎指教。另外,還有巴洛克一詞,笹田的作品當中帶著些許巴洛克的古典意境。在這裡則是取用「17世紀的繪畫」具代表性時代的詞彙做解釋。
在觀看作品時,如果是日本人的話更容易能夠去聯想「前田莊」個標題,的確日本在高度成長期之後,典型的建築平面圖的「莊」,其「莊」之命名與凋零的公寓很切合。作品中就是以過去到現今日本國內裡狹小的空間做為舞台,並以典型日本人相貌的模特兒為畫面坐鎮。
以上就是這次與展覽標題交疊的意義。也就是說,為了與西洋繪畫黃金時期的巨匠的名作做對比,因而產生出以現今的日本人為主題的繪畫行為,「現代・日本」以此創作出嶄新的「油畫」是笹田晉平所極力宣言的主軸。當然作家在這裡表現出了,具前瞻性並已超越現代藝術的框架的氣勢。
※這次的展出的新作,將與其主題相同的摹寫一同展出。